Frankfurt R-Wagen

Photo by: NITS-Center

基本情報

1993年に導入された当形式はフランクフルトだけではなく世界で最初の100%低床車両。世界初を名乗れる代償は大きく、登場から30年経った現在でもいくつかの問題点を抱えながら営業運転に就く。

製造年:  1993 / 1997
製造会社: Düwag / Siemens
製造数:  40
改造年:  2006-2014
廃車:   (1996 / 2005)
運用開始: 1993
運用終了: 2023-(予定)
編成両数: 3両編成40本
編成:   A-C-B

台車配列:   Bo'2'Bo'
軌間:     1435mm
全長:     27,20m
車幅:     2,35m
車高:     2,75m
最高運転速度: 70km/h
最高設計速度: 70km/h

利用する際のお得な情報

振動が伝わりやすい構造なうえ、直線区間でも横揺れが多いことから乗り物酔いしやすい方は要注意。
一人用シートは通路側に荷物置きスペースが備わっているが、ドアも近いため盗難被害も多く、荷物からは手を離すのは厳禁。

製造経緯と歴史

1980年後半、当時計画されていた「路面電車撤廃計画」が完全に実行できないことに気づいた政治家により、新型路面電車の導入が提案された。その際、バリアフリー化を推進していた方々により低床車両の導入が提案された。
低床車両を導入し、フランクフルトの路面電車を再度活性化させる意気込みを込めて、車番は000番台となった。
選挙前の完成に間に合わせるため、普段なら量産先行車を作成して試運転で集めたデータを反映させて量産するプロセスを完全に省き、ぶっつけ本番で製造された。この計画により、第一編成は無事に間に合ったものの、その代償として複数のトラブルが発生することになる。プレス公開時の試運転でもすでに数m走ったところで動けなくなるなどの軽い問題から、直線区間での横揺れが激しく走行中に頻繁に脱線するなど重大な問題まで発生した(直線でよく出る中速域での横揺れが最も激しかったため、道路上では揺れの勢いで脱線したのちに揺れの勢いで軌道に戻ることが多かったという。運転手自身も気づかずに脱線していたことも日常だったという)。強力ダンパーなどの追加設置などで問題は軽減されたものの、完全に改善されることはなく、現在でも複数の問題が発生し得る状況となっている。中でも車軸モーターを冷やす冷却水の温度調整を行う器具が屋根上にあり、夏場の直射日光でオーバーヒートすることで車両が使えなくなるなど、比較的初歩的な設計ミスなども見られる。ブレーキも既存の車両とは違い電気指令が遅延しているため、前方の車両に衝突することもしばしばあった。また、車両の大部分を機械式から電気式に変更したうえにバリアフリー化の関係上床下という概念が無くなったことで、屋根上の機器類が密集し熱を放つことでオーバーヒートが発生するなど、問題多き車両となりつつあった。
1次車の20編成が導入され、4年間改善を続け2次車が20本導入された。当初は追加で60本導入される予定だったものの、2次車でも多数の問題が解決されなかったことを理由に注文はキャンセルされた。Siemens側からはCombinoに変更したうえで60本製造するとの提案もあったが、競争入札法に触れるため新規に発注が行われることとなった。結果、その後導入されたのはBombardierのFlexityとなる。

車両構造

改造後の車内の一角。Photo by: NITS-Center

編成の真ん中を中心点に、前後が点対称になるように作られている。配列は2+1となっており、この後に登場するS型T型と比べて通路部分に余裕がある。
ライトグレーを基調とする車内となっており、改造前は手すりまでライトグレーだった。
窓が大きくとられているため、夏場は車内がかなり暑くなりやすい。
車軸が車両の左右を貫通しないため、台車部分のシートは台の上にあるが通路は先頭から後方まで段差のない構造となっている。段差のない100%低床車両は当形式が世界初とされている。

改造

2006年から2014年にかけて、全編成が更新工事を行った。外観の塗装パターンがわずかに変更されLED式運用番号表示器が設置されたほか、車内の手すりが目立つ黄色のものに変更され、すべての窓やシートモケットが交換された。構造上の問題でクーラーが搭載されることはなかった。そのため、U4型同様扉に通風孔が設置された。
センサー式運転アシストの組み込みのため、2010年代後半より一部編成の運転席部分にカメラ装置が搭載された。センサー感知のため、フロントカバーにも穴をあけ、一部機器類を運転台の下に収めた。
2022年以降、一部編成に運転室に冷房設置工事が行われている。今後も使用する2次車にも設置されている中、廃車予定の1次車にも設置されているらしいがすべての編成に設置するわけでもないらしく、公式側からも発表がないため今後の改造予定が比較的不明のまま。
2020年前後、デジタル無線化の関係で通信機器類の工事が行われた。工事を完了した編成は読みにくくなった行先表示のフォントの違いで見分けがついた。デジタル化に伴い、本来プログラムされていた停留所だけではなく、すべての停留所を表示できるようになったほか、工事迂回などの特別表示もプログラムできるようになった。2022年前半に全編成が工事を終えている。

各仕様の違い

当形式には1次車と2次車が存在するが、目立った違いなどはない。

特殊編成

一部編成は窓部分を含めた全面広告ラッピングや窓下の部分のみを使った広告ラッピングをまとっている編成が複数存在する。頻繁に変わるため、すべてのバリエーションを掲載するのは難しいので、広告ではないものの特別なデザインになっているもののみ紹介する。

LED試験編成。現在はすでに戻されている。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

LED改造編成(033号編成)

更新工事最終編成となった033号編成は、今後登場する車両に組み込むべき要素の試験車両としてほかの編成と少し違った改造が行われた。灯具類はLED化され、Wi-Fiの設置工事が行われた。
ほかの編成にも反映されるかと思いきや、2023年初めに故障の影響で逆に通常のライトに戻された。

在籍状況

事故廃車となった010号編成と017号編成以外の38編成はすべて運用に就いている。
010号編成は1996年に車止めに衝突して大破したため、部品取り編成となり2006年に解体された。
なお、017号編成は2度大破しており、初回の事故で007号編成と衝突した際にB側先頭車を交換している(復旧の際に010号編成から部品を移設した)。そのため、2001年以降は007A-007C-017Bと017A-017C-007Bの編成で運用復帰している。車籍上はそれぞれの編成番号になった。のちに017号編成が2005年に車止めに衝突して大破したため廃車され部品取りとなった。

運用情報

当形式は主に15号線、16号線、17号線、18号線と21号線で運用される。ほかの路線にも入ることは、連結運用となる20号線を除き、普通にある。
T型の導入により、1次車にあたり001号編成から020号編成が置き換えられる予定。また、置き換えられた編成はブダペスト市電に売却されるという話が上がったが、詳細は不明。2次車は2022年現在置き換え予定がない。

情報ソース

・フランクフルト市電保存会
・元運転手だった同僚
・VGF, "Frankfurter U-Bahn: Rückgrat der Mainmetropole", 2018, Zarbock GmbH & Co. KG
・VGF, "Die Elektrische: Unterwegs in Frankfurt", 2018, Druck- und Verlagshaus Zarbock GmbH & Co. KG
・VGF, "Mobilität für Frankfurt: 50 Jahre moderner Nahverkehr", 2018, Societäts-Verlag, ISBN 978-3-95542-320-9

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