Frankfurt M-Wagen (Mt-Wagen) (Düwag GT6)

Photo by: NITS-Center

基本情報

輸送力増強のために導入されたM型は、フランクフルト市電史上初の連接車両となる、後に登場する連接型車両の基礎ともなる形式。改造によっては郊外路線でも活躍したほか、地下鉄としても走行した経歴がある。

製造年:  1959-1960 / 1963
製造会社: Düwag
製造数:  M: 45 (編入1編成) / m: 14 / ma: 12
改造年:  1967 (M>Mv) / 1968 (Mv>Mt) / 1978 (Mt>M)
廃車:   1998
運用開始: 1960
運用終了: 2004
編成両数: 動力車46編成・付随車26両
編成:   A-B

台車配列:   B'2'B'
軌間:     1435mm
全長:     19,665m
車幅:     2,32m
車高:     3,185m
最高運転速度: 70km/h
最高設計速度: 70km/h

利用する際のお得な情報

保存車両でもある102号編成はフランクフルト市電のDüwagスタンダード形式の中で唯一オレンジクリームの塗装をまとっている。市電保存会の臨時便で比較的多めに稼働しているが、経年劣化の影響かブレーカーが頻繁に落ちるため走行中に抵抗を入れなおす姿がよくみられる。

製造経緯と歴史

L型が導入されたのち、フランクフルト市電での需要に合わせて追加の車両が検討された。1958年には先に導入されていたDüsseldorfのGT6を一編成借り入れ、試運転が行われた。試運転結果が良好だったことから、翌年には30編成(601号編成から630号編成)の導入が決まった。1963年には15本(631号編成から645編成)が増備された。増備の際、631号編成から636号編成はLv型と同じく郊外路線対応車として搬入されたため、Mv型として区別された。また、1次車の導入の際、付随車のm型が14両(1801号車から1814号車)導入された。1964年から1966年にかけて、ma型と名付けられた改良型の付随車が12両(1815号車から1826号車)導入された。
地下鉄開通とともに、1968年には入り口部分の車幅を拡幅したMt型も改造によって誕生する。地下鉄車両のU2型が揃う1978年まで運行され、後にM型に再改造されて市電区間に転属となる。
1998年9月に完全引退となる。不要となった車両は主に東欧に売却された。

車両構造

Düwagのスタンダードとも言える内装は大きな改造などなく現存している。Photo by: NITS-Center

フランクフルトでは初となる連接構造で、動力車は2両1編成で組まれている。車内はL型同様、深緑の合皮シートで、2+1配列となっている。
片運転台・片扉仕様で、車両後方には簡易運転台が設置されている。
付随車のm型は単車で、l型とほぼ似たような構造となっている。こちらも車両後方に簡易運転台がついている。
実は2次車の幅が2,35mなのではないかという話が上がった。事の発端はとある接触事故で、前方の1次車はすり抜けられた部分に2次車が接触したことだという。実際、図面上ではともに2,32mとなっているがM型以降の後継形式は2,35mとなっている。結果は、話題が再浮上した時点ですでに2次車が完全廃車となっていたため現在では謎のままではある。

改造

ワンマン化の際に使用不可になった扉は目立つほどに印がついている。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

ワンマン運転化に伴い、切符の販売が運転手の仕事になった。そのため運転席の台が拡張され、先頭の扉が塞がれた。埋められたわけではないため、扉に赤い線でバツが描かれている。Mv型は郊外路線対応車として先頭の扉が片開きだったため、元から塞ぐ必要がなかった。
搬入当初からMv型として作られた631号編成から636号編成とは違い、616号編成から630号編成及び637号編成から645号編成は1967年にMv型に改造された。168年にはMv型からMt型に改造された。
1978年にはすべての車両がM型に再改造された。

各仕様の違い

M型

市内線向けの通常仕様。運用開始当初はツーマン運転向けの仕様だったが、先述の通りワンマン化されている。
Mv型が改造されてM型になった編成もある。

Mv型

郊外線に入線するために仕様が異なる編成。616号編成から645号編成が該当する。車輪のフランジ部分が他と比べて大きいことなどの細かい違いがある。
郊外路線が地下鉄に置き換わるとともにMt型に改造された。当仕様は現存しない。

Mt型

郊外路線の地下鉄化に伴い、地下鉄車両の車幅に合わせるために扉部分が拡幅された仕様。618号編成から645号編成が該当する。のちに登場するPtb型と同じく、稼働ステップを車両外側に増設した。Ptb型とは違い、赤外線センサーが車内ではなくせり出している部分に設置されていたことから、少しの汚れや雨で扉が閉まらない事案が多くあったという。地下鉄車が十分にそろった1978年に市電向けのM型に再改造された。当仕様は現存しない。

特殊編成

1975年に誕生したM型の600号編成は、本来はN型の805号編成だった。分岐カーブで脱線転覆した際に中間車の破損が復旧困難だったため、中間車部分を取り除き両端を復旧させて短縮した。ほかの車両と区別をつけやすくするため、601号編成より前の600号編成と附番された。

在籍状況

保存会臨時では、M型+l型などのミックスをやることも。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

フランクフルトには102号編成(元602号編成)と1804号車が動態保存されている。動態保存されている2両は保存会のイベントや臨時運転に使用される場合がある。

フランクフルトでの運転終了後、一部車両は東欧の複数の街に譲渡された。主にポーランドのポズナンに売却され、現在でも走行している。

運用情報

当形式の定期運用は2004年に終了しており、現在は動態保存されている2両は保存会のイベントや臨時運転に使用される場合がある。
過去には市内の各路線で運用されたほか、Mv型/Mt型に改造されたものはフランクフルト北部に位置するOberurselやBad Homburgまで運用された。Mt型においては地下鉄路線を主に走行した。

情報ソース

・フランクフルト市電保存会
・元運転手だった同僚
・VGF, "Frankfurter U-Bahn: Rückgrat der Mainmetropole", 2018, Zarbock GmbH & Co. KG
・VGF, "Die Elektrische: Unterwegs in Frankfurt", 2018, Druck- und Verlagshaus Zarbock GmbH & Co. KG
・VGF, "Mobilität für Frankfurt: 50 Jahre moderner Nahverkehr", 2018, Societäts-Verlag, ISBN 978-3-95542-320-9

関連形式

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