Frankfurt U2-Wagen

Photo by: NITS-Center

基本情報

初期のころから長年にわたってフランクフルトの地下鉄を支えてきたU2型。フランクフルト向けに計104本製造された当形式は、優れた性能で大きな成功例と評価され、カナダやアメリカなどにも輸出された。フランクフルトでは現役は引退したものの、現在でも保存会が行うイベントなどで乗車したり動く姿を見ることができる。

製造年:  1968-1984
製造会社: Düwag, Wegmann, Siemens
製造数:  288 (Frankfurt: 104)
改造年:  1998-1999, 2005-2012
廃車:   2008-2016
運用開始: 1968
運用終了: 2016
編成両数: 2両編成288本
編成:   A-B

台車配列:   B'2'B
軌間:     1435mm
全長:     23m
車幅:     2,65m
車高:     3,28m
最高運転速度: 80km/h
最高設計速度: 90km/h

利用する際のお得な情報

当形式は加減速が比較的急なため、常に手すりにつかまっていることをお勧めする。

製造経緯と歴史

フランクフルトの地下鉄を建設するにあたって、新規に路面電車企画ではない車両を導入する必要があった。試験目的で製造されたU1型をベースに、複数部分で改良を加えた量産型がU2型となる。
1968年から1978年にかけて1次車から6次車がフランクフルトへ搬入された。1980年の車庫火災で被災した車両の代わりとなる7次車の6編成は1984年に追加で搬入された。初期の搬入はBR50型蒸気機関車の牽引による甲種輸送だったが、地下鉄車両と本線車両のフランジの違いによる脱線事故が発生して以来は乙種輸送で搬入された。
地下鉄開業に伴い搬入された1次車の30編成(303号編成から332編成)は1968年6月から1969年にかけて次々と到着した。1971年にはA2号線の地下鉄化に伴い2次車の15編成が搬入された。3次車と4次車はそれぞれ10編成ずつで輸送力増強のために1975年9月から1976年4月に納入された。1977年と1978年には5次車25本、6次車7本が導入された。先述の通り、7次車6本は被災車両の置き換えがてら1980年に導入された。こうして12年かけて合計104編成が導入された。

車両構造

前面部分はファイバーガラス製のものとなっており、その他の部分は普通銅製となっている。2両1編成の連接車両で、パンタグラフはA車の連接部分よりに搭載されている。
製造当初は固定ステップが備わっており扉が裾まで伸びていたことから、台車との位置合わせの関係上扉の位置がややオフセット気味になっている。パーツや内装はほかのDüwag車とほぼ共通したものが使用されている。そのため、扉パーツが別形式のものが組み込まれている編成なども存在した。
導入時、303号編成から367編成は菱形パンタを搭載していた。368号編成からはY型パンタグラフとなったが、部品交換などを行い一部編成が菱形からY型に換装されたケースもある。
製造当初、当形式は赤と白の塗装をまとっていた。1981年から新塗装(オレンジ・クリーム)に切り替えられた。追加発注の形で導入された7次車は既存車とは仕様が異なり、搬入当初から新塗装で納入されたり車内構造が多少異なっている。1996年にはVGFカラーとなるターコイズ一色となる。一部編成はオレンジ・クリームのまま残った。

改造

後述の通り、当形式にはステップの高さの関係上から3種類の使用が存在する。
それ以外では運転室の拡張工事が行われたり、シートモケットの更新などが一部編成で行われた。すでに廃車が始まっていたことから、両改造ともすべての編成で実地されることはなかった。

各仕様の違い

U2

原型のグループは約68cmの高さに固定ステップが設置されており、32cmホームと56cmホームに停車することができた。新型車両のU4型が導入されるにあたって、一部の駅が80cmにかさ上げされる必要性があったため、徐々に改造された。低床ホームが地下鉄線から消えると同時に当グループの車両もなくなった。ステップがあった部分は後に埋めたため、改造された跡が分かりやすく残っている。

U2h

2009年ごろの1次車最終編成の記録。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

低床ホームへのステップが不要となったことから、入り口部分をかさ上げしたもの。改造当時にはまだ56cmホームがあったため、入り口の高さは87cmとされた。入り口部分にはそのため車内側に10cmの段差が残ったが、この改造によって56cmホームと80cmホームの両方に停車できるようになった。

U2e

2012年ごろに見ることのできた3色編成。真ん中は広告車。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

ebenerdig(ステップフリー)を意味するeをつけたグループ。名前の通り入り口部分の段差が解消された。新型車両のステップフリーアクセス対応工事の際、車両とホームに段差ができることから車体のドアした部分にテープが貼られた。
車いすなどの乗車の妨げとなっていたドア中心の手すりを一か所撤去する工事も同時に行われた。撤去した部分の入り口はドア上の黄色いテープでマークされた。

特殊編成

一部編成は窓部分を含めた全面広告ラッピングや窓下の部分のみを使った広告ラッピングをまとっている編成が複数存在する。頻繁に変わるため、すべてのバリエーションを掲載するのは難しいので、広告ではないものの特別なデザインになっているもののみ紹介する。

地元のサッカーチームのエンブレムを大きくアピールしている406号編成。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

最終編成でもある406号車は引退までフランクフルトのサッカーチーム「Eintracht Frankfurt」の広告ラッピングをまとっていた。引退後にはラッピングは剝がされずに休車の状態で車庫に留置されている。

在籍状況

保存車3編成はすべて登場当時のカラーリングをまとっている。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

フランクフルト地下鉄の車両は2016年4月に引退したものの、保存会に3編成が譲渡された。最初に搬入された303・304・305号車が対象で、新型車両との車番重複を避けるために保存車向けの100番台を名乗り、133・134・135号車に変更されている。

運用情報

2016年の引退イベントの一コマ。最終編成の406号編成も最後まで残った。クリックで拡大 Photo by: NITS-Center

フランクフルト地下鉄では現在は3編成とも動態保存で不定期に臨時便に投入されることがある。勾配とブレーキシステムの関係上、U8号線とU9号線の通るRiedbergには営業運転での入線が禁止されていた。
U2hは2012年11月までU1号線、U2号線、U3号線で運転されていた。U2eは2015年まではU4号線、2016年まではU7号線で運用された。2016年4月3日には大きな引退イベントが開かれ、保存車の3編成と最後まで残った3編成の合計6編成で臨時列車が運行された。

カルガリー、エドモントン、サンディエゴ、メンドーザに4都市では現在でも一部列車にて運行されている。

情報ソース

・フランクフルト市電保存会
・元運転手だった同僚
・VGF, "Frankfurter U-Bahn: Rückgrat der Mainmetropole", 2018, Zarbock GmbH & Co. KG
・VGF, "Die Elektrische: Unterwegs in Frankfurt", 2018, Druck- und Verlagshaus Zarbock GmbH & Co. KG
・VGF, "Mobilität für Frankfurt: 50 Jahre moderner Nahverkehr", 2018, Societäts-Verlag, ISBN 978-3-95542-320-9

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