今となってはドイツ各地で見ることのできる、見慣れた形状を持つLINT。2022年9月撮影

Alstomがディーゼル車両の製造を終了

23年に渡って製造され続けたLINTの製造が終了し、2023年末に最後の車両が甲種輸送された。欧州3大製造会社で最後までディーゼル気動車を製造してきたが、これにて一つの大きな時代が終わる。

1999年から23年間、ドイツ国内だけでなくオランダやカナダに向けて製造された"Coradia LINT" (以下"LINT")。Alstomの吸収合併前のLHB時代から開発・製造が続けられ、1093編成も製造されたディーゼル気動車プラットフォームもついに終わりを迎えた。最後に落成したのはHLB向けのLINT54、VT717こと 1622 017 / 517 編成で、2023年12月15日が最終日となった。すでに製造が終了しているDesiro、Talent、RegioShuttleなどと比べてかなり長い間製造が継続され、近年では唯一となっていたディーゼル気動車プラットフォームが終わることによって、今後は非電化区間に導入できる車両の価格高騰も見込まれる。

衝撃対策などで設計が変わった2次形状。

LINTは大きく分けて5種類が製造された。単車のLINT27、連接車のLINT41、2両編成のLINT54、3両編成のLINT81と水素車両のiLINTだ。LINT41とLINT54に関しては、製造の時期によって構造の違いなどがあるため、各鉄道会社のオプション差分を除いては9種類が存在することになる。

Talbot/Bombardierによって製造された Talent、Siemensの Desiro Classic はともに2008年に製造終了しており、2010年代以降は大手鉄道車両製造会社で唯一残ったディーゼル車両だった。そのため、特に非電化区間が多いドイツ北部や東部では古い車両を置き換える目的で発注がだいぶ続いていた。現在でもドイツのほぼ全域で見ることのできる車両形式と言っても過言ではない。

過去数十年に渡って改良が続けられ、環境負荷を大幅に軽減し続けたディーゼルエンジン。現在鉄道で使用されている水素エネルギーやバッテリーなどと比べて環境にかかる負荷はもちろん段違いではあるが、効率という点だけに注目すると気動車が勝る。金額的にも大幅に異なるので、今後非電化区間に新型車両を導入するにあたっては、インフラの再整備が必要になるか、水素車両やバッテリー車両のために多額の車両導入資金を準備する必要が出てしまう。特に間違えられがちな問題点が、既存のディーゼル車両を置き換えるための水素またはバッテリー車両は、同数以上必要になるということ。一回の燃料補填で走行できる距離が大幅に違うので、特に長距離の区間では今までより車両交換が多めに必要となってくる。

水素車両には4次形状が反映された。2022年12月撮影
57編成と少数で終わったItino。

かつてAlstomではCoradiaシリーズでBR618のLirexなどが製造されてきたが、LINTほど成功したプラットフォームは無かった。Lirexは試験的な部分もあったが、Bombardierから編入されたItinoに関しては現在でも少数ながらも運転を続けている。しかしこちらに関してはLINTと大きく違う部分が多いようで、主に保守の面でパーツ不足のために苦戦しているという話はたまに耳にする。LINTもこれにて製造終了となったところで、置き換えるための車両が無くなったともとらえられる。

現在、LINTの次に若いディーゼル気動車はPesaのLINKではあるが、こちらに関しては導入当初にドイツ国内でのトラブルが多発していたため、今後新たに導入される確率は低いだろう。

まだ運転されている気動車車両の多くは本来であれば置き換えの時期を迎えつつある。

特に今後の大きな問題となるであろう部分は、レールバスなどの単車で運転されているローカル区間。このような地域に導入できる単車のクリーンエネルギーな車両は今のところ存在しない。コスト面の問題も大きいが、車両重量による線路や橋などインフラへの負荷やホーム長などの課題点をクリアする必要もある。

RegioShuttleなどの単車レールバス、今後の置き換えはどうなるのか。

クリアできていない点が多い中、気動車製造が終了してしまい、今後は主にドイツ国内の非電化区間にかなり影響してくるであろう今回のニュース。今後の各地域の動きにも注目していきたい。

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