夏だ! 週末だ! 海だ! の方程式はドイツではそう簡単に成り立たないのである。とかいいつつ、仕事帰りに北へ旅立った人がここにいる。簡単そうに見える旅程も迂回と運休で崩壊した2025年7月25日から27日のブログ。
今回も、まずはルートをおさらい。今回のルートは緑色で描き込んでおります。年末あたり、この一年でどのルートの旅行をしたのかを色分けでわかりやすくするための準備ですね。お楽しみに。

本来計画していたルートとは多少異なるのですが、それは後程写真と説明。
今回のドイツ北西部探索、実は3年前にも一度チャレンジしていたのですが、その時は列車の運休に伴い別の地域を探索することにしたので完全未訪問の土地。この週末旅行を思いついたのは実は出発1週間前で、「そういえば北の方のIC列車ももうすぐ無くなるじゃん」といった単純な理由で急に決まったものでございます。
今回も鉄道以外のことは期待しないでください。多分元々誰もしてなさそうではあるが。ハンブルグの行きつけのレストランだけ先に紹介しておきますね。

以前のブログでも登場している、アルトナ地区にあるBlaue Blume。今回も立ち寄らせていただきましたが、ロケーション的にも最高で料理もおいしい。少食な私でも食べきれるサイズの料理で、味付けも濃すぎずに食べやすいのです。テラス席や窓際の席では夕焼けをバックに列車を眺めることもできるので、トレインビューな夕食も楽しめますよ。人気店なこともあって、週末は予約しておくことをお勧めします。
さて、鉄道以外のコンテンツも掲載したところで、ここからは完全に公共交通関連とさせていただいてもよろしいでしょうか。ありがとうございます(自問自答)。
さて、このルートは余裕を持って旅するなら2日は必要になるんですね。日曜日は午後に用事があるのでフランクフルトに戻っていなければいけないということで、金曜日はフレックスタイムを思いっきり使い、12時ちょっと過ぎに事務所を後にします。そしてICEに飛び乗ります。こんなイレギュラーすぎる前提条件の下、金曜日の夕方にハンブルグに辿り着ける旅程が誕生するわけですね。なんの参考にもならないことは承知です。
そんな私に罰が当たったのか、分岐器故障でハノーファーから大幅に迂回され、泣く泣く30分遅れとなる。ハンブルグに到着できただけでもマシといったところだろうか。夕食は友人たちと共にできたので結果としては問題無し。


翌日は朝6時にホテルを出発し、北の玄関口のターミナル駅でお馴染みのハンブルグ・アルトナ駅に。中央駅と当駅を結ぶ路線も工事で完全封鎖ともあり、ここに辿り着くまでもまた運休と迂回の影響で所要時間増加。到着できれば問題ないんです。
とはいえ、デンマーク行きの国際列車は普段なら中央駅始発。アルトナに入線するのは珍しく、かつ現在のIC客車の入線はおそらく今回限りの物なので、レアなシーンを記録できたなと。9月ごろから新型客車に置き換わるとのことで、この組み合わせも近いうちに見納めとなりそう。
ここから2時間かけて北上するのはRE60。夏季の増発列車で、通常運転のRE6より停車駅数も少ない速達便です。
こちらで使われている車両は唯一無二のMarried-Pair客車と呼ばれるもの。2両一組のノンステップ客車として製造されたが、客車の需要が低迷していた時期に登場したためあまり普及せず、ここで活躍する90両45組以外は製造されなかったある意味迷な車両です。快適ではあるんだけどね。
ハンブルグはこれほど快晴なもんだから、北のほうも天気が良いだろうと思い込んだそこのあなた。名推理、お見事です。


ど~ん~て~ん~(Ikko並みの発音)
あ、これMarried-Pairちゃんのお顔ね。かわいいでしょ。
最初の目的地のNiebüll(ニービュル)駅に到着。お空真っ暗、雨は降ってない。クラウドサービスって課金してなくても勝手に加入させられるんですよね。
まだ現役の腕木信号機といい、手動踏切といい、ここは時間が止まったのではないかと思える駅。
乗り換え先の列車の出発までは時間があるので、この駅の名物でもある車輸送を見てみる。後ほど立ち寄るSylt島と本土を結ぶのは線路のみで、道路が無いため旅行者たちは車を本土に置いていくか、はたまた列車に載せて運搬してもらうかのどちらかとなる。夏季シーズンは夏休みともあって家族連れが多く、通常旅客列車より臨時の運搬列車が多く設定されるほど。
こちらは搭載途中の風景。この日見た運搬列車は上下線どれも満車状態。おそるべし。運搬列車については後程ゆっくり。


待機していると、最初のICが入線。本来ならこちらも多層建て列車で後ろ2両がこの駅で増結されるんですが、この日は無し。よくあることです、仕方ない。
どちらかといえば、特別塗装のBR218型ディーゼル機関車が2両目につながっているのが残念。ちゃんとディーゼルで黒くなっていない真っ白なお顔を拝みたかったんですけれども...
そしてデンマークからT4が入線。こちらはオーストリアのÖBBで大活躍中の5047型で、ドイツ国内ではBR627扱いとなっている単車の気動車。くりくりな大きなヘッドライトと車体に組み込まずに外に設置した配管が特徴的。
友人に譲ってもらった模型は手持ちにあるのですが、本体を見たのは今回が初めて。


DBの本線の駅から一旦離れ、negのNiebüll駅へ。そう、ここはなんと道路を挟んで駅が二つ存在するのです。
そんなnegも今回が初めまして。画像に映ってる気動車は元々うちの子なんですけどね。Taunusbahnで活躍していたBR628は3本いたのですが、そのうちVT51はルーマニアへ、VT72は近辺の別線区へ移籍となった中、VT71ははるばる北へ。どうもオヒサシブリーフ(古い)。

懐かしの車両に揺られ続けて20分弱。おそらくドイツで一番海に近い駅であろう、終着点の Dagebüll Mole (ダーゲビュル)に到着。大半の乗客がここからフェリーに乗り継ぐ中、私一人だけ逆方向に歩き高台のほうへ。あいにく干潮時に来てしまったこともあり、水はほとんどない状態。
連れてきた客車と電源車を切り離し、折り返しの列車の準備が始まったので記録。この後は気動車だけが満員で折り返し出発して行きました。では残された客車はどうするか。

後続の列車に連結されて戻っていきます。なんと時間差わずか20分ほど、さっきの満員列車と比べてこちらは私含めて乗客3人。少し待てばいいのに...
IC客車との連結を見ることができるのはあと数週間ほど。来年にはIC列車がTalgo編成に置き換わる予定だが、Talgoは切り離すことができないうえ、こちらの路線に入線するには長すぎるのでやむを得ずに廃止される予定。多層建て列車も一気に数を減らしますね。
すでに運休しがちなダーゲビュルIC、この日も運行されたのはこの一本だけだったようで。ラッキー。
ニービュルまで戻り、入替作業を観察。先述の通り、本線駅とneg駅は少々離れているので、ICを本線にもっていくには入れ替える必要があるわけですね。ほぼそのためだけに使われる踏切で待機。使用頻度が低いためか遮断器もなく、電源車の3軸が分かりやすく撮影できます。それにしても、DBの客車が他社の気動車に牽引される姿もなかなか見ることができないので貴重なシーンですよ。


本線駅に先回りしてみると、Westerland(Sylt)よりICが到着済み。気動車が客車を押しながらゆっくりとほかの客車に近づき連結作業が行われ、電源車と気動車はまた切り離されてnegのほうへ戻ってゆく。作業員の方々は手慣れた作業のようですが、初めてきた私にとっては見てるだけで楽しい作業です。見れなくなるのが余計悲しい。
作業が行われる中、背後では本来の目的が稼働し始めていた。
Di6、はじめまして! ノルウェーに友人がいるしゅうと申します
BR251としてドイツで登録されているこちらのMaK DE 2700型ディーゼル機関車。元々は1995年にノルウェーにDi6として12両が搬入されて活躍していたのですが、不具合が重なり1999年に手放されたのでした。その後は製造元のドイツへ戻り、現在では主にこちらで活躍しているわけです。
この子の活躍ぶりを見るために、Westerland(ヴェスターランド)へ移動。


Sylt島への車輸送はDBとRDCの2社が行っており、こちらのHectorrail所属のBR251はRDCの子たちが使えないための代走。本来なら青い子が見れるはずだったわけですが、個人的にはこちらの塗分けのほうがしっくり来ているのでなおさら嬉しい限り。
Sylt島といえば本土と結ぶ鉄道線で撮影する人が多いのですが、最寄りの駅が遠いので私は諦めて駅で記録。このように車がスロープを登って島道に向けて走り去っていく姿を見ることができるので、これもこれでいいんですけどね。
機関車本体を少々観察。現在はドイツのみの認可のため、他国には入線できない状態。ノルウェー時代は北国らしくライトは窓のすぐ下にあったのですが、ドイツでは着雪による前方視認妨害があまり発生しないので、バッファの上に移設。ライトがあった場所は埋めた後が分かりやすく残っていますね。
そしてなんといっても6軸も必要とする大型ディーゼルエンジン。度々騒音問題になるほど爆音。その分、牽引力は異常に高いんですけれども。
さて、十分記録したのでハンブルグに戻ります。


いや、戻りたかったです。途中で放り出されました。
私が悪いことをしたわけじゃないですよ、列車が途中駅で運休になっただけです。だけとか言いながらも十分酷いけどね。
Husum(フーズム)駅に不時着。打ち切りの放送があと数分早ければ、別の路線に乗り換えられたんですけどね。
入替作業が行われたので、原因を見てみる。
うん、派手に割れてますね窓。
「たった一枚の窓」が打ち切りの原因と思われても仕方のないことですが、割れた窓が運悪く緊急脱出時の窓で、テープなどで補強することもできず乗客の安全にもかかわるため、運休せざるを得ない状況となりました。割った人には責任を取っていただきたいところではあるが、どうにせよ帰りの手段が無くなったことに変わりはないのである。


1時間近くやることが無くなったので、望遠レンズを覗いて車両区を記録。この北海に面している北部にディーゼル機関車が多いのは戦争も影響しており、電気が無くても人員や物資を移動できるように配置されたという軍事的な背景も絡んでいる。この地域も電化計画が進みつつあるとはいえど、昨今の世界情勢と見ているとどこかしら考えておくべき点でもあるよなと思ってしまう自分がいる。決して、そのような目的で残しては欲しくないが。
ヴェスターランドからハンブルグの直行便はRE6なわけだが、夏季シーズンはどの列車も満員状態。すでに満員状態の列車に、この打ち切りで乗り換える必要が出た人数を合わせるとどう考えても積み残しが発生しそうなので、私は別路線に乗り換えることに。
新型の蓄電池車両ならでは、ディーゼルモーターの振動もなくかなり静かで快適でした。


そんなわけでSchleswig(シュレースヴィッグ)駅に到着。またもや何もない駅。
乗り継ぎ待ちで、対向列車が来てくれたので撮影。こちらの北部の車両は、運行会社関係なくブランドカラーを統一する計画が前からあったのですが、こちらのTwindexxはそのブランディングの第一号となります。結論から言うと、先ほど登場した蓄電池車両のようなブルー基調がメインとなるわけで、この黄緑色のイメージカラーは普及しなかったのが残念。ちなみにこちらの車両ももうしばらくすると置き換えられます。記録はお早めに。
さて、本来乗車する予定はなかったECが到着。冒頭で書いた通り近いうちに置き換えられる予定なので、私も今回がおそらく最後の機会となりそう。ドア故障にクーラー故障の車両を引き当てたあたり、本当にもう寿命だなと感じる一幕もある中、無事に定刻にハンブルグへ帰還。


ゴムタイヤコッペパン君ではないか。
ドイツとデンマークを結ぶ列車で、車両不足の都合上で一往復のみこちらのディーゼル気動車で運転されます。すでに何度か引退詐欺を起こしていますけれども。君はいつになったら国際運用から撤退するのかね、快適な車両だから個人的にはこのままでもいいんですけど。
この子もアルトナ発着はレアなので、せっかくだから駅名標と絡めて記録。
翌朝、フランクフルト方面に戻るための準備。工事の影響で、乗車予定の列車は中央駅スタートではなく、南のHarburg駅出発。
入線まで少々時間があったので、カメラを取り出して待機。貨物列車が来るかと思いきや、最初に来たのはオーストリアからスウェーデンに向かっているSnälltåget。ちゃんと記録するのははじめてでした。
それにしても最近除草されていない場所が増えた気がするのは気のせいだろうか。


ついでにNightjetも記録。去年まではDBのBR101牽引だった夜行列車も、今年よりオーストリアの機関車で運転されるようになったのでES64Uシリーズをドイツで見る機会も増えた。
そうこうしているうちに、乗車予定の列車が入線。偶然にもICカラーの特別塗装のBR101を引き当てましたとさ。この車両は特別塗装の初日からよく出会う子だったので、旅の終わりにまた会えてほっこり。
元の計画では帰り際に寄り道する予定でしたが、悪天候の影響で直帰することに。結局は家に到着する直前にスコール並みの大雨にやられましたけれども。

自宅に無事に到着してから数時間後、ドイツ南部にて列車が脱線したとの情報が舞い込む。土砂崩れが原因と推測されているものの、まだ確定したわけでは無いようで。このブログを綴っている時点では、運転手1人と研修員1人が殉職、乗客1名の計3名が死亡、けが人が多数とのこと。事故現場のバラバラになった車両の画像に心を痛めつつも、「列車に乗車する」ということについて改めて考えさせられる。