例年と比べて、2025年に入ってからほとんど旅行をしていなかった矢先に、野生の祝日による4連休が現れた。たたかう? バッグ? ポケモン? 逃げる? いや、これは旅に出るしかないでしょ。予定日2日前に、3国を跨ぐ切符が召喚されたのであった。

遡ること2025年3月1日。今年も旅行しまくるぞーと意気込んだうえで最初に旅に出たのはWoltersdorfの引退イベントだった。今まで通りなら、NITS旅行シーズンがここから始まり、ほぼ毎週と言えるほどどこか撮影に出かけていた。はず。4月中旬にノルウェーから支部が突撃してきた以外はここまで旅に出ていなかったのである。

6月のダイヤ改正が迫る中、このタイミングで引退する車両はなにか。ドイツ南部で運転されているダブルデッカーのICであった。あまり記録していなかったためこれはいい機会だと思い、切符を購入する前にStuttgartにホテルを取った。無計画にもほどがある。出発日2日前の火曜日、ようやく乗りつぶしマップとにらめっこを開始、如何に変なルートでStuttgartに向かえるかの検討会が始まる(参加者私一人)。Würzburg経由? Nürnberg経由? Saarbrücken経由? 国内の路線は工事の影響であまりそそられなかった。

じゃあ国境またげばいいのでは?

フランクフルトから出ている列車はほとんど頭の中に記憶してある(ぶっ飛んだ変人だとは自覚しております)。そんな中ピックアップしたのは長距離運転を行う便でブダペスト行きやマルセイユ行きと並んで長距離トップ3に入るであろう、ミラノ行きのECE151便だった。さすがにミラノまで乗り通すのはちょっと遠いが、「そうだ、チューリッヒに行こう」ということでふらっと決まったのである。結果、Frankfurt - Zürich - Stuttgart - Strasbourg - Frankfurt という不思議なルートを組み上げたのである。チューリッヒはそもそも初めて、シュトラスブールは11年ぶりとなる。

ECEという種別は、2017年に新設されたばかりの新しい種類の列車で、フランクフルトとミラノを一日一往復だけ結ぶこの便が発端である。今では別のルートで本数が増えたものの、フランクフルト発着は引き続きこの一往復のみなのがもったいない。

なんせ車内が1等車2等車ともに快適なのである。個人的には最新のICEよりも気に入っており、このままミラノまで乗っていても良かったなと思うほど。

チューリッヒまでの4時間はあっという間に過ぎるもので、気づけば12時ちょうどにはスイスの駅に降り立っていた。

はじめまして、フランクフルトから来た怪しいものです

クラウドサービスを除けば天気もなかなか良く、家を出るときに持ってきたジャケットはただのお荷物になっただけだった。

初めてのチューリッヒ、滞在時間はなんと乗換の2時間半。初めてだったからこそ、多少は下見ということで割り切っており、いずれミラノに行く際にチューリッヒに一泊しようかなと考えていたり。

さて、初めての街に降り立ったらやるべきことは一つ。

トラムの撮影である。

祝日だから旧型車両は動いていないだろうなと思っていたが、中央駅から徒歩5分のところで早速遭遇。平日だけだと思っていたが、どうやら15号線は基本的にTram2000系列で運転されている様子。これはとても好都合。

そしてなんと低床部分が挟まっていないバリアフリーではない車両も動いていたことには驚き。こちらの2両編成版はすでにほとんどがウクライナに譲渡されているものだから、スイスで遭遇できるとは思っていなかった。記録できてラッキー。

こんな風に、いつも通りのトラム的な記録が続きます。鉄道にあまり興味のないそこのあなた、ここから先の2ブロックは読み飛ばしても大丈夫です。

東海道チューリッヒ新幹線です(違う)

白ボディに簡易的な青いストライプ、これは東海道新幹線ですね。

コブラの愛称で親しまれているBe5/6型。今までネット上の画像でしか見たことが無かったのですが、実際に見てみるとなかなかいいフォルムですね。

最新型のBe6/8型。先代のコブラの面影は一切なく、まったくもってチューリッヒの新しい顔となったようです。

この...なんというか、レジアイスに似通っている印象を受けるというか...(ポケモン好きに伝わってほしい)

あまり中央駅から離れず、ひたすらトラムの記録をしていましたが発車時間も近くなったので駅構内に戻り、お土産も買ったり。

なかでも行きたかったチューリッヒの有名ショコラティエSprüngliにも立ち寄ることができ、今までで出したことのない額を払って高級チョコレートを購入したのでした。

程よい甘さながらもカカオの味がしっかりと口の中に残りつつ、プラリネはそれぞれのフレーバーの特徴を主張しすぎずに引き立てているので味が喧嘩せずに良いハーモニーとなっているのが最高。大切に至福のひとときを過ごす際に食べることにします。

さて、次の列車に乗車する準備は万端...と思ったら、そもそも乗車列車がまだ到着してないの。軽く時間を潰しながらも、入線放送が流れたのでホーム付近へ。

頭端式ホームなので、入線する列車が正面から撮れるのが素晴らしい。屋根のアーチもドイツの駅と比べるとやや低めだけど、入ってくる自然の光が十分いい味を出してくれるので眺めているだけでも楽しかった。

入線シーンを撮ろうと構えていると、先に隣の列車が入線してきた。追いかけるようにもう一本が入線してくる。

それにしても、ダブルデッカーの壁。

オール2階建ての8両編成2本の16両編成。さてはあんた、Maxやまびこ号だな?

ウォール・ダブルデッカーを横目に、こちらのミニダブルデッカーの入線を待つ。いや、6両編成も十分大きいけれど、隣に16両もいたらね…

さて乗車。個人的にはこの豪華な車両がICで、導入される予定のTalgo車がICEになるのがとても不思議に思う。立場的には逆であろうに。

こちらの車両はオーストリアのWestbahnという会社から買い取ったもので、2022年にDBにて運用を開始した。1等車のシートの縫い目はWestbahn時代の名残なのか、黄緑と水色の糸だったりする。

そんな最近導入したばかりの車両が、来月6月にDBから消えることに。再度オーストリアに戻り、今度はÖBBで活躍する予定とのこと。そんなわけでいい機会だったので乗り納め。

Stuttgart方面に向かう路線は景色も良く、Schaffhausen付近のライン川の滝も見えたり、自然豊かな地域を通るルートなのでスマホをいじってなくても景観だけで旅が楽しめちゃう。

2等車であれば、SingenからStuttgart間はD-Ticketでも乗車できるので、多少は混雑するものの安く利用できるのもおすすめポイント。

Böblingenにて下車。先週運行を開始した新型車両を記録すべく降りたが、この日は祝日ともあって運用に入っていなかったので旧型車両の画像すら省略。このまま別の列車に乗ってホテルに向かうことに。

ホテルが工業地帯にあるため、夕飯を買う術が無かったので荷物を置いてからいつもの肉屋で購入すべく中央駅へ。ついでだったので、車両が新型に変わってから立ち寄っていなかった登山電車路線の10号線へ。

急な勾配の都合上、線路の中心にギザギザな線路が追加で敷かれており、車両側の歯車と噛み合って急斜面を登れるように設計された特殊路線。以前の車両は40年ほど使用されていたため、2年ほど前に車両を一新、他の路線でも使われている車両に合わせたデザインとなった。

ある一種のアトラクションみたいなものなので、一度立ち寄ってみることもおすすめしたいね。途中駅からの眺めも良いので。

日付は変わって金曜日。Westbahnが運転する列車のうち、一日一往復だけWienからStuttgartに直通する列車があるので、記録すべくObertürkheim駅へ。通常ではS-Bahnとその他の列車で線路が分かれているのですが…

なんでS-Bahnのほうに入った? しかも逆線走行で。

本来ならもう一本こっち側を走るはずでしょうよ。予想以上に雑草が伸びてたからこれもこれでいいけどさ。

さて、ここからフランス方面に向かうためにまずはKarlsruheまで行きます。

定員オーバーで遅延して入線してきたRE2。折り返しで乗車する人数も多く、私もギリギリで乗車。途中駅の乗降人数がほぼ同じくらいなので、一瞬だけ車内の人数が減ったと思いきやその次の瞬間にはまた満員に。

RE2はもとから混雑の激しい路線で、以前から車両化本数を増やす要望は出されているものの、現状ではどうしようもないようでまずは減車や運休しないように維持している状況の様子。早く改善してほしい気持ちはあるのだが…

なんだかんだで無事に乗換駅のAppenweierに到着。なんと乗換時間怒涛の40分である。特に何もすることが無いので、降車したホームでちょっと荷物を整理しようとしたら逆光でRailAdventureの回送が来たり、蓄電池車両のMireoが来たりとちょっとだけ愉快だった。ただこの駅、本当に何もない。

ひたすら日陰で待ちつつ、まずやってきたのはOffenburg方面行き。これが折り返しKehl方面行きとなるのだが、こちらもすでに満員に近い状況だったので、もう少し風が吹く日陰で待つことに。

ところでこちらの車両、トイレがついてないんですね。Kehlの駅にも無いし、Appenweier駅にはなおさら何もないのでトイレの近い人間にとっては少々地獄。本来ならすでにフランス側の新型車両が運転されているはずなのだが、認可の問題でまだドイツには乗り入れできないようで。はよしてくれ。

はてさて、Kehlに到着。ここからはD-Ticketが使えないので券売機で切符を購入...しようと思ったら長蛇の列で待たされ、列車を一本見送ることに。その次の列車もかなりの混み具合で、フランス側に突入してから数駅で下車して後続のトラムに乗換。クーラーが効いてただけマシと言えるだろうか。

旧型車両を片目に見つつ、多少懐かしみながらカメラを向けたり乗り継いだり。こちらも今回の弾丸旅行では下見という形で訪問しているので、あまり時間が無いため大急ぎでちょいちょい撮影しながら場所を移動。

個人的に撮りたかったEurotram。無くなる前に、懐かしの車両を記録できてなにより。シュトラスブール訪問の目的はこれと言っても過言では無い。というかむしろこれだった。短い7両編成版はすでに完全引退しており、この9両編成版も先はあまり長くなさそうで、早いうちに記録しておきたい気持ちが強かった。ついでに乗車したけど、このパノラマウィンドウに夏の日差しでクーラー無しはかなりきついものがあり、一駅で下車。もういや。

メインの目的が達成できたので、ここからは全てが適当になります。

中心地にあたる乗換駅、Homme de fer。直訳すれば鉄男になるわけで(私?!)、シュトラスブールにはほかにも不思議な駅名がたくさん。後に帰宅してから地図とにらめっこしていたが、あまりにも街の造りが謎すぎて訳が分からなくなった。謎の街、シュトラスブール。

思った以上に時間が迫っており、急いで中央駅に向かい売店に立ち寄り、お土産のついでに昼食を購入(逆じゃない?)。乗る準備ができたーと思ったら、そういえばフランスの一部の駅ってホームの番線が決まるのは到着直前でしたね。もう少し撮影できたのでは。

2番線とのことで、ホームに上がってみる。隣の1番線には別のTGVが停車中。この先頭車両も久しく見ていなかったので、なにかと懐かしい気持ちだらけだった。

ここからマルセイユから到着したTGVでフランクフルトまで直行...できるかと思いきや、分岐器故障で迂回しつつ30分ほどの遅延で到着。幸いフランクフルトで3ホーム先の乗り換え先に向かってダッシュしたら0分乗り換えが成功したので、無事に予定通りに帰宅。ダッシュしたけど、お土産その他はすべて無事でした(チョコをもぐもぐしながら書いてますこのブログ)

一見、忙しそうに見えつつ、まったりと久しぶりの旅を楽しめた2日間。普段から向かった先の目的地では忙しなく動き回っているように見えるけど、個人的には向かうまでの列車の旅も旅行のうちに含んでいるからこんな感想が述べられるのかな...? 乗り換えのストレスが少ない直行便をチョイスしたというのも大きい気はするが。今回選んだルートは眺めも良い路線が多いからか、他の旅行以上に楽しめた部分もあるかもしれない。

さて、次はどこにいきましょうかね。